HOME 漢検1級挑戦記 好きな言葉


【好きな言葉】

老驥ろうきれきに伏すも志は千里にあり



 「駿馬しゅんめは老いてうまやに伏せていても頭の中は千里のかなたを駆けている」というような意味らしい。中国の武将であり詩人でもある曹操の言葉。ハイテク時代の書斎ノウハウ本に載っていた。
 果たして馬の脳にどれほどのイマジネーションがあるのか知らないが、この言葉には昔を振り返って懐かしむのではなく、老いてなお立ち向かう姿勢が感じられる。
 五十代後半に至って、体力、気力の低下をかこつようになった。混迷する世の中はとても安心な老後を保障してくれそうにない。しかし、どんな事態になっても志を持っていたい。自分の可能性を見いだし、それに挑戦していきたい。
 書をやる先輩のTさんに座右の銘にしたいからと所望したら、筆勢鮮やかに、走る駿馬のような字で書き上げてくれた。書斎に掲げ、“駄馬”のあがきを夢みている。

 50代のころ、北海道新聞(1998.4.15)に書いたもので、いまも変わらず好きな言葉です。



 汗血馬の古代彫刻
 カラシャールで発掘された汗血馬の彫刻




 『漢検 四字熟語辞典』より
 老 驥 伏 櫪  ろうきふくれき  (1級)
[意味]人が年老いてもなお大きな志をいだくことのたとえ。年老いてしまった駿馬しゅんめが用いられることなく、馬屋のねだに伏し横たわっていながら、なお千里を駆けようとする志をすてない。「驥」は千里を走る駿馬。「櫪」はくぬぎの木、これが床下の横木に使われたことから、ねだの意。ここは馬屋のねだ、転じてうまや。
[補説]老驥ろうきれきす」とも読む。「老驥ろうきれきすも、こころざし千里せんりり」の略。
[出典]曹操そうそうの「歩出夏門行ほしゅつかもんこう

曹操は『三国志演義』に奸臣・悪玉として描かれていますが、その実像は政治家・軍人であるとともに作詩に秀で、歌謡を五言詩の文学にレベルアップした人物として再評価されています。とくに中国では魯迅が、日本では吉川幸次郎(『三国志実録』)がこれまでのイメージを逆転させました。



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