HOME 木彫は楽し 猫 動物いろいろ 人形ほか 展示会・公募展 余談
――――― 猫 ―――――
●「ゆず おっちゃんこ」 孫娘の原画を立体に
孫娘が描いた飼い猫「ゆず」は、よく特徴をとらえていて、とても可愛い出来栄え。この原画をそのまま下絵にして、木彫で再現できないかトライしてみた。“ふっくら感”を出そうと凹凸の境目は緩いカーブになるよう工夫したつもりだが、原画にある“ほのぼの感”までは表現しきれなかった。やはり一番可愛がっている者の目にはかなわないということか。背面は絵がなかったので、私流にややラフな色付け。
「おっちゃんこ」は北海道弁で「お座り」の幼児語。子猫にぴったりと思ってタイトルにした。「小さい」ことを「ちゃんこい」というのと関連するのかも。(2023/12/1)
●「肥り過ぎだニャ…」 デブトラに彩色
キャットドアに腹がつかえて抜けられず、もがいているデブ猫……TV番組の犬や猫の笑いを誘う動画特集でときどき見るシーン。本人(本猫?)をトラ柄に塗ったが、どうも表情がイマイチ。動画なら、このとぼけ顔でも動きで表現されるが、木彫はいわば静止画、切実さが伝わってこない。反省していたら、不意に“放蕩息子の帰還”という言葉が浮かんだ。サカリがついてほっつき歩き、痩せてよれよれで帰ってきた奴のほうが笑えたな! この頃、どうもアイデアが最初に決まらない、後から思いつく。2023/5/5
●「猫川柳レリーフ」 二転三転の末
自作の川柳を活かしたレリーフを彫ってみよう、と思い立ったのは昨年の夏、酷暑のさなかだった。句は、猫の習性をとらえ微笑みを誘う、我ながらいい出来に思え、絵は付け足しだからとラフなまま彫り始めた。しかし彫りながら、こんな単純な葉っぱの木があるわけないな、と気づき、彫り上げた後もやはり気に要らず、1枚1枚彫り直すことにした。ここから作業は二転三転し始める。葉の繁り、木陰の猫、地面の影と、陰影のバランスが複雑になった。とくに猫の毛色が微妙だ。
アクリル絵の具を白+微少の黒で薄いネズに調合すると、なぜか青みを帯びて、日陰の白猫にしたいのに日向のロシアンブルーに見えてしまう。顔彩、墨汁、遅乾剤のメディウムまで加えて何度か試みたが、色むらが出てドブから上がった猫のようになり、どうも思い描くイメージと違う。手がなくなって放って置いたのだが、過日、東急ハンズで“ニュートラル・グレー8”なる色を見つけ、これをベタ塗りして収めることにした。まだ完全に納得したわけではないけれども……。2023/8/15
●「招き子猫」小さなオテテに大きな願い
猫ネタのアイデアがしだいに枯渇してきた。で、なんとなくGoogleの画像検索をしていたら、かわいい「招き猫」の絵を見つけた。発信元は無料イラスト素材集のイラサポfree、自由に使っていいということなのでありがたく拝借し、少しアレンジして彫り、彩色した。
上がる一方の物価、上がらない給料や年金……。この“招き子猫”の小さなオテテ(前足というべきか)は庶民の願いだ。来年はなんとか金運を呼び寄せてもらいたい。2022/12/18
● 「怪しい奴 II」 曖昧なまま進めた結果
子猫が何者かを相手に、倒れながらも対決しようとしている体勢を彫るつもりだった。ところが片方の足裏を地に着けた捻った形が想像できず、曖昧な下絵のまま彫り進めた結果、不自然な体勢になり、やむなく四肢とも上にあげた
“びっくり仰天” の形に修正せざるを得なくなった。これでは負けの体勢、子猫の健気な反撃の意思を表現できない。
で、飼い主がジャラケさせている愛玩シーンに切り換え、自分の手を参考にして彫ったら、今度はゴツすぎて子猫を圧倒する感じになった。しとやかな女性の手にしたほうが、マニキュアや指輪なんかも細工できて、面白かったのでないか。どうもアイデアがあとから出てくる、老いのせいか。2022/8/15
● 模刻「牝猫」 小顔に修正
近代木彫の鬼才と称される佐藤朝山の「牝猫」を、未熟を顧みず模刻したのは12年前のこと。しなやかで凛とした美しい造形に魅せられたからだった。実物を見たことはなく、ネットで見つけた側面の写真(左上)1枚だけしかなかったので、見えない部分は成り行き任せに彫った。その後、求龍堂の新刊で、この猫の正面の顔を発見(左下)! それは私の想定をこえて目も耳も大きいもので、さっそく手直ししたのだったが……。本棚に置いて日常的に目にしていると、どこかスマートさに欠ける感じがしてきた。
TV番組の絵画教室で、講師が、初心者は顔や手先足先を実際よりも大きく描いてしまいがちだ、と言っていた。そうか、この違和感は顔が大きいせいだ、と気づいた。そこで本に書いてある実寸の高さ37.5p、私の模刻21pから比率を割り出して鼻先を4oほど落とし、合わせて頭部を小さく削る修正をした。小顔はやはり美形の要素らしい。さて、その結果……やはり足元にも及ばない似て非なるものに過ぎないが、ほんの少しは近づいたと思いたい。2022/5/1
●「オオヤマネコ」野生の面構え
仕上げは研磨せず、鑿や彫刻刀の削りあとを残し、彩色面を少なくして、サクラ材の木肌の美しさを活かした。
オオヤマネコの特徴は、丸顔に見えるほど毛量の多い頬ヒゲ、それと(進化の過程でなぜこんなものが生えたのか?)耳の先の一つまみの飾り毛。他はイエネコと大差ないと思ってみたが、やはり野生は何かが違う。オオカミは群れて狩りをするがヤマネコは単独で捕食する、いわば己以外はすべて敵または獲物とみなす習性だ。その孤棲する野生を表わしたい、と気合を入れて色付けしたら、歌舞伎の隈取りに似てきた。2022/4/8
●ミニ猫3個、舐め愛彫り?
がらくた箱を整理していたら、端材で小物を彫りたくなった。「うずくまり猫」と「おすわり猫」はオンコ材、「のびのび猫」はシナ材だ。小さいから短時間で形が見えてくるが、と同時になんていうか、小さいもの〜可愛いものには庇護本能がはたらくのか? これは人間ばかりではない、他の動物でも種が違う子を舐め愛することは多々ある。で、私もこのミニ猫を舐めるように彫った次第。仕上げに木彫オイルを薄めて塗ったので、木目がきれいに浮き上がった。2021/12/28
●「夏の寝姿」 ネイル用のミニ筆で彩色
あと一息と思っていたが、苦手の彩色が意図したようにいかず、納得できるまで4回塗り直した。最終的には、いままでやったことのなかったネイル用の超極細ミニ筆(カーヴィング教室で学んでいた頃、仲間にいただいた)で、虎斑模様を1本1本丹念に描くことになった。柔らかい線で表現でき、これも面白いのでは。
いろいろ試行錯誤しているうちに、はや防寒着が必要な10月末。タイトルを “床暖の上の寝姿” とでもすべき季節になってしまった。2021/10/25
●「夏の寝姿」 あとは彩色だけ
夏の猫は寝相がわるい。暑さを避けて、涼しい床の上なんかで四肢をなげ出し、体熱を放散しようとする。だらけきっているように見えるが、理にかなっているので、人間もつい共感し、癒されたりする。
次女宅の飼い猫 “ゆず” の状態を何枚も撮ってもらい、それを参考に彫りあげた。研磨、ラッカー〜ジェッソ(下地剤)を塗り、最終的な形になった。あとは色を塗るだけ。彩色はいつも苦労するのだが、今回は同じモデルの2作目だし、寝ているから目は線だけでいい。どうやら、もう一息のところまできた。2021/10/10
●「逆三角ストレッチ」 バーニング仕上げ
猫の背筋伸ばしは、よく見かけるのが前足を突き出しお尻を持ち上げるポーズだが、今回はちょっと違う▽の形──四肢を揃え背中を天に突き上げた変則スタイルを彫ってみた。名付けて“逆三角ストレッチ”。この形、仕上げが近づくにつれ倒れやすくなってきた。足裏の接地面が小さいので、身体の前後の比重が均等でないとひっくり返るのだ。台座を作りダボで繋ぐ手もあるが、どうにかバランスをとって立たせ、地震がきたら真っ先に倒れる置物というのも面白いのでないか。彩色せず、久しぶりにバーニングでタビー模様を描く。2021/2/18
● 初対面は匂いをかいだだけ
コロナ自粛で年始挨拶も玄関先で済ます正月になった。が、この機会に飼い主の次女の家族に木彫猫を手渡すことができた。間もなく送られてきた初対面の動画……“ゆず”は“木彫ゆず”を見つけると、あ、あれはなんだ、という感じで足早に近づいたが、匂いをかいでただの木片と認識したとたん興味を失ったようだ。関心を示したのはほんの2〜3秒のことだった。
猫は動くものにはジッとしていられない性質、次はアクションのあるポーズを彫ってみようかと思う。また、いままでに彫った獲物をねらう猫や威嚇する猫、よちよち歩きの子猫なんかを持ち込んで、物陰から顔を出したり引っ込めたりしてカマってみたい。コロナが収束してからだけれど……。2021/1/8
● 「お座り“ゆず”」 キトンブルーとタビー斑
次女宅の子猫“ゆず”像。まずは普通に座っているポーズを彫って、顔形や毛並みの特徴を把握してみることに。彫りは順調に進み、姿形のしなやかさや毛並みのモコモコ感を表すため、彫刻刀の削り跡を、ヤスリとサンドペーパーで消して滑らかにした。
彩色はいつも苦心する。キトンブルーの目は濁りをいかにきれいに見せるか、青とネズの配合を何度も試して塗った。斑のなかのタビー模様は左右対称でなく複雑に入りくんでいるので、主要な縞だけに単純化して描いた。さて似ているかどうか? いっしょに暮らしている家族には微妙な差異も見逃さないと思うので、どんな感想になるか気になるところ……。2020/11/22
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アップロードするや、すぐさま「めっちゃ可愛い」「本物みたい」「モコモコ感が出てる」などと娘たちから感想が寄せられた。実作をすぐにでも手渡したいが、コロナ蔓延の渦中ゆえ娘の家族とも会うのを避けている。私としては、この“ゆずもどき”と“ゆず“本人(じゃないね、本猫というべきか?)と対面させて、その反応も見てみたいのだが、いまや感染急増で札幌は警戒ステージ4相当とか、楽しみは遠のくばかりだ。2020/11/25
● 「忍び足」 研磨仕上げに
これもいただいたオンコ材、長さは28センチで手ごろだが、高さ・幅はともに8.5センチと極端に細長い。で、獲物にそーっと忍び寄る猫の低い姿勢を彫ることに。緊密な材質に負けないよう彫刻刀を念入りに研いで作業に入り、硬すぎる個所は彫刻刀の柄尻を肩で押す彫り方で進めた。
木目をきれいに出したくてヤスリとサンドペーパーで研磨すると、ヤニの固まった痕だけでなく、何やら知れない汚損があちこちに現れた。うーん、この木も紆余曲折を経て今日に到ったのだろう、それをありのまま見せよう、と考えを改めた。また目を金色にし、その光が際立つよう全身に木彫オイルを塗ったら、汚れまで目立って顔が傷だらけの野良みたいになった。これも一興か。2020/10/17
● オンコ材でミニ猫
木彫サークルの先輩からいただいたオンコの端材が残っていたので、ミニ猫を彫った。暑い日が続いて気持ちが集中できず、実際には彫ったり放っておいたりで、気が向いたときに少しずつやってきた。硬いし小さいしでしょっちゅう放り出していたのだが、ときどき思い出したように手にしていたら、いつか仕上がった。木目を際立たせるためよく研磨し、木彫オイルを塗る。
彩色は目だけ、アクリル絵の具で金目にした。理由はちょっと短絡的だがオンコの和名 “一位”、一位=金メダル、という洒落。2作とも丈10センチほど、小さくても最高級材である。2020/8/22
● 「遊び相手」 白猫とハイハイ赤ちゃん
動くものにジャレようとして、お尻を持ち上げシッポも天に突き出し、前足に力を溜めた猫。まずこの形が面白いと思って彫った。対する相手にはゼンマイ仕掛けのレトロ玩具“ハイハイ赤ちゃん”を模してみた。材料はバスウッド(アメリカ産のシナノキ)。
彩色は、猫の体毛を白一色、目鼻は青とピンクでシンプルな仕上げに。“ハイハイ赤ちゃん”は昭和の頃はセルロイドだったと思うが、いま市場に出回っているのはプラスチックか? 質感を出すため全身にニスを塗った。小さすぎる目や睫毛は柔らかさとコシのあるコリンスキー筆(酷寒のロシアに生息するアカテンの毛筆)で描いた。2020/8/5
● 「おっさん座り」 メタボな茶トラに
チェンソーで輪切りにしたシナの丸太が、やっと猫の形に収まった。この座り方はスコティッシュフォールドという品種に多く見られ、“スコ座り”ともいう、メタボな猫特有の座り方らしい。彫り始めには、太りすぎてふてくされているような奴にしたいと思っていたが、割れ目だらけのバサバサの材質をあれこれ工夫しながら、糸引き目や二重顎、ぽってりした足なんかを彫っていると、しだいに可愛くなってしまった。彩色も淡いほうがふっくら感が出ると思い、茶トラに仕上げた。タビー柄はほとんどアドリブで一気に描く。左右対称の原則も遺伝子にゆらぎが生じるようなので、このいい加減なところがちょうどいいのでは。2018/12/12
● かつての飼い猫、しっぽ巻き座りに
娘たちが小学生の頃、白いオス猫を飼っていた(家族との交流は、拙作「猫も歩けば」に=『われらリフター』所収)。シャム系の血が入っているらしく体型はしなやか、純白の毛並みに青い目とピンクの鼻先が愛らしかった。キャットフードなんてない時代、煮干しが一番の好物だった。名前はチック、奴の面影をしのんで8年前に彫った。表情もうまくいって自分でも満足していたのだが、その後、目が肥えてきたのか、己の技量の足りなさが目につくようになった。そこで今回、胴体をスリムにし、耳、胸、足周りをリアルに表現、とくに尾の先を延ばして、いわゆる“しっぽ巻き座り”に修正した。尾の先をハネあげて、少し元気を付け加えたつもり。2018/10/10
● 「顔を洗う猫」 毛並みのテクスチュア
毛並みの表現は、これまで、@彫刻刀で削って付ける、Aバーニングペンで焼いて付ける、の2つの方法しかやったことがなかったので、今回、B電動ルーターでくっきり凹凸のある、いわゆるテクスチュアを入れる手法にトライした。
参考にしたのは、ペットグッズなんかを売っている店で見かけた猫のフィギュア。本物の毛並みと見紛うほどのふさふさ感……プラスチック製らしく、叩くと空洞のような音がした。過剰なリアルはかえってわざとらしさになりかねないので、そのちょい前くらいのレベルで木に表現すべく試みた。盃型の先端ビットなら深みを付けられそうに思えたが、シャープになりすぎてダメ、けっきょく円筒型のビットで仕上げた。ついでに耳毛〜耳穴、舌先もよりリアルに修正した。2018/8/3
● 「首を掻く猫」 足周りと首を修正
以前の作品で、いま見ると気にいらないものがいくつかある。このさい修正できるものは修正し、修正のしようがないものは彫り直すことにした。
このポーズは体が斜めにしなり、かつねじれているので、当時、形がよくつかめなかった。入手した写真では裏側が見えないし、猫カフェに行ってもなかなか望みどおりになってくれない。とくに体を支えている右足の位置がどこか不自然で、気になっていた。修正は、木片を貼って右膝を盛り上げ、足先は内側に向けて半分あぐらをかいた状態に。ピンクの肉球が2個所みえるので、子猫の愛らしさが増したのでは。ついでに頭を一旦切り離し、もっと傾斜をつけて上向き+ねじりを加えて接着、“かゆい”切実さをほんの少し強調してみた。2018/6/1
● 「追いかける猫」 ゴーストタビー風に
獲物を狙って追いかける猫の動きを彫りあげ、彩色は運動好きで好奇心旺盛なロシアンブルーにした。しかし、グレーを塗ってみると、色自体が地味でくすんだ感じだし、単色ではなんとなく芸がない気がしてきた。思案の末、ゴーストタビーという極薄の虎縞を入れて深みを出すことにした(子猫のとき尾の先に出てくる現象をそういうらしいが、それをアレンジして全身に)。グレーは白い絵の具にほんの少し黒を混ぜるだけだから簡単だと思ったのだけれど、水分にもよるのか濃淡の度合いがかなり微妙で、塗るたびに色(明暗)が変わる。まだ納得できないが、繰り返し塗るのが嫌になって、この辺でもういいや、と放り出した。2018/3/10
●「アビシニアンII」 再々々削り直し、塗り直し
何度塗り直しをしただろう。塗りだけでなく、全体を一皮剥くようにヤスリをかけたり、電動ルーターで削ったりバーニングで毛並みを焼いたりしたので、猫は次第に痩せてきた。彩色では調合した色を木片に試し塗りしても、やはり本体に塗らないと感じがつかめない。気にいらないとジェッソを塗ってやり直し。何度も繰り返しているうちに、今度は少しずつだけれど、塗った色の層の分だけ太ってきた。
今回のシナ材、木質が柔らかすぎてグザグザになり、思い通りに彫れないことがすべての作業に響いたが、バーニングペンで全身に毛並みを付け、その小さな溝を絵の具の溜まりにすることで色むらを防ぐことができたように思う。まだ完全とはいえないが、やっと思い描く毛並みの表現に近づいた気がする。いまの私にはこれが限界か。2017/9/23
● 「ターゲット・ロック・オン」 目で変わる表情
獲物を狙う猫の目。以前にバーニングしたものだが、入手した写真に忠実に描いたのに何となく不満が残っていた。それが何なのかわからなかったのを今ごろ気づき、目だけ描き直す。たったこれだけのことで、獲物のかすかな動きも見逃さない、目のリアリティが表現できたように思う。2017/3/10
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● 「ZZZ…」 バルサ材をテスト
どんなものか初めて買ったバルサ材を試作してみた。まるで発泡スチロールのような密度のなさで、彫刻刀は力を入れなくても切れる。電動ルーターで削るとあっけないほどスイスイ進む。子供か初心者の練習用にはいいかもしれないが、木彫とは胸を張っていえない材料だ。しかし、やり始めたので完成させた。色を塗れば材質までわからない。展覧会でよく「作品に手を触れないで」とあるが、これは「手に持ってみてください」と表示するのも一興かな。意外な軽さに、あれっ、と驚くに違いない。
「ZZZ…」をなんと読むか。寝息を表すオノマトペ(擬音語)なので、読む人によって変わるようだ。普通グーグーだろうが、子猫が熟睡している状態なので、クークーがスヤスヤと判読していただければ。2017/1/20
● 「アビシニアン」 キリリとスラリ
書店で見た『世界の美しい猫101』の表紙のアビシニアンに魅せられた。和鋏を開いたようなキリリとした顔立ち、バレリーナのような筋肉質のスラリとした体形、真っすぐ見つめる視線は涼やかで、凜とした気品があった。本の猫と目が合った瞬間、これを彫ると決めた。
短毛種なので骨格や筋肉の配置をおろそかにできない。猫カフェ“ 福猫茶房 ”に行き、同種はいないがベンガル系“遊”くんの細身をよく観察し、引き締まった体形に近づけた。彩色はいつも苦労、イメージどおりにいかなくて何度も塗り直し、ずいぶん日数を費やした。2016/4/22
● 「子猫2匹」 歩き始めの形と表情
猫は生後3週くらいで歩き始めるらしい。行動範囲は狭くても子猫にとっては大冒険だろう。おぼつかない足どりで踏ん張りがきかず腰が引けている形、見るもの触るもの新発見、好奇心から首を伸ばし目を見張る表情……そんな“おっかなびっくり”の状態を表わしてみた。
やっとこ歩きの子猫はタビー模様をアクリルで、何かに驚いてフリーズしちゃった子猫は、ベンガル柄をバーニングとアクリルで。目の色は、生まれたばかりの猫に特有のキトンブルー
kitten blue、濁った青色なので、きれいに見せるのが難しかった。2015/11/12
● 「二足立ち猫」 何を見てるの?
四つ足の猫が二足立ちすることがある。何かの気配を感じ、それを“見極め”ようとしているのかと思ったら、猫の目はひどい近視で0.1〜0.3しか見えないとか。ジッと見つめているかのようにみえるのは、物音を“聞き分け”ようとしているところらしい。聴覚のほうは哺乳類のなかで最も発達していて、人間には聞こえない高周波〜低周波の音域や微かな昆虫の足音まで聞こえるという。
彩色で三毛猫に。前面はほとんど白一色、背面は豪華な和服のイメージ。鼻先と耳の内側だけ削って木肌を出した。2014/12/18
● 「棒になった夢」 シナの原木から
定年退職のあと木工場に勤めた後輩からシナの原木を数本もらったので、さっそく彫ってみた。一番長い材を選び、うつ伏せでのべーっと前後に足を伸ばして寝ている猫。
生木だから、削っていくと芯の赤身と表層の白太(しらた)の色の差や、腐れ節〜汚れ(青太というらしい)が出てきたり、ヒビ割れが生じたりと思わぬアクシデントもあったが、それも一興と楽しんだ。彩色しても汚れを隠しきれず、ややラフな仕上げながら、これはこれで納得。「棒猫」との題も途中から「棒になった夢」に改めた。2014/9/12
● 「Cats Walk」 3匹が行く
ボス猫ができたので、先につくった歩く猫2匹を従えて組物にしてみた。ボスの体は他の猫より大きめにしてあるし、3匹とも足の運び、尾の形はそれぞれ変化を持たせている。また瞳の大きさもマチマチだったので、これは同じ条件下にするとあり得ないこと。猫の目のように変わるというくらいだから、2匹を昼の細い瞳に描き直す。ボスを先頭に縄張りをパトロール……実際にうちの周りを歩かせてみた。
2014/7/15
● 「ボス猫が行く」 サバトラ柄で縦縞の背広風
キャットウォーク3作目は“ボス猫”。他の猫たちを威圧する体の太さと、同時に果敢な気性も表現しなければ、と肥り気味にし、面構えも工夫した。 とくに前作2匹とは足運びを変えてあるが、これは岩合さんのTV番組“世界ネコ歩き”を録画し、何度も静止して正確を期した。 サバトラの毛並みは、ギャング映画でみるボスは縦縞の背広が定番のようなので、そのイメージのつもり。2014/7/12
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