HOME 木彫は楽し  動物いろいろ 人形ほか 展示会・公募展 余談
木彫は楽しA


―――――動物いろいろ―――――


「寝そべる犬」 雑な作業の面白さ
 木彫の会の先輩から角材をいただいた。細長い形状から寝ている動物なら収まりそう。少し青味を帯びているので朴かと思ったが、削ってみると粘りがなく、かなり硬い。パリンと欠ける個所もあり樹種がわからない。猫の寝姿は何度か彫っているので、今回は犬にしよう、と決めた。だが犬は詳しくないので、種類もわからないままテキトーに下絵を描き、したがって彫りも塗りも雑になった。その雑さ加減がけっこう面白かったので、これで仕上げとする。2024/2/20
 



「ハクトウワシ」威嚇の形相
 動物は口を開けると恐ろしい顔になる。ペットの猫でさえ欠伸をしただけで獣に変わる。ハクトウワシの凄い表情を見つけた(アラスカやカナダが棲息地らしいが、厳冬期には根室の風蓮湖や温根沼に飛来するとか)。餌の取り合いで他を威嚇しているのか、それとも、腹減った〜とわめいているのかわからないが、大きな嘴と鋭い目とが相まって、いかにもワイルド。この迫力を表現すべくトライしてみた。
 材料は士別の友人からいただいたホオの丸太。緻密で粘りがある材質なので細工に向いているが、直径22センチの原木で、手挽き鋸でカットするのに10日も費やし、彫る作業も老いて非力になった腕には硬すぎ、ほとんど叩き鑿の仕事になった。その点、彩色は4〜5色のベタ塗りなのでスムーズに進んだ。2023/8/23
 



「白ネズミ」にイメージ・チェンジ
 天才・佐藤朝山の真似をして模刻体験を終えてみると、下手な作品はただの木片。いっそ色を塗っちゃえ、と気が変わった。さてネズミは“ネズミ色”に違いない。だが、それではリアルすぎ……私の過去の住居環境からいえば、この動物は駆逐すべき害獣だった。で、赤目白毛にして清潔感〜愛玩イメージに変身させたつもり。これまで彫ったいろいろなポーズの猫と組み合わせて置けば、小さな物語が生まれるかもしれない。2023/6/15





朝山作「子」模刻、ほぼ仕上げ彫り
 敬愛する彫刻家・佐藤朝山の「子」を模刻してみた。求龍堂の本の写真では材質はクスノキらしい、平刀か浅丸刀で彫っている。私の材料は北海道産のシナノキ、軟材なので彫りやすいが重みが出ない。形を真似ることを意識するとチマチマした彫り方になってしまうので、スパッと刀の切れ味を出すほうに意識をおいた……。
 体を少しひねった形は動きを表現しようとしたのか、ザックリ粗い彫りなのに曲線の多いしなやかな構図だ。私の腕ではこの単純な形ですら追いつけないが、ネズミ一匹に洗練された創意を感じとれた。2023/6/6




「チーター・ウォーク」 寒中をアフリカ気分で
 寒波襲来で冷え込んだ2月、発想を飛ばしてアフリカの動物たちをネット画像で探すと、サバンナを悠然と歩くチーターがいた。肩をそびやかして歩く様は、いかにも地球上の最速ランナーらしく、筋骨隆々にして贅肉は一片もないカッコ良さ! 以前に親子を彫ったが、また魅せられて彫る。
 毛並みの彩色が大変だと思ったが、黒い玉模様をマーキングペンで描いたら、ややイラストっぽいが意外にスムーズに進んだ。ということで、寒中をアフリカ気分でしのぐと、はや春の気配がそこまできていた。2023/3/5

   
   



「Wolf−遠吠え」 ヒトだって吠えたくなる!
 狼の遠吠えする姿を現実に見たことはないが、よく絵や写真で目にするのは高い岩山の上から夜空に向って吠えているシーン、満月が出ていればより効果的だ。
 狼と犬の体型はほとんど同じように見える。写真を見て感じた相違点は、@両前足の付け根の幅が犬より狭い、A野外に棲むので保温のため体毛がふさふさ、B四肢が細く指先が開き気味、Cいつも飢えて痩せている……。これに野生動物ゆえの目の“険”を加えたかったが、数キロ先まで聞こえるほど全力集中して吠えるとなると目をつぶるような気がして、そこまで表現できなかった。
 コロナで引きこもり生活が続き、止まらぬ感染に心が痛む。私も吠えてみたくなった。ワクチンはまだかーっ、オリンピックどころじゃねえぞーっ! 2021/5/2
    



「チーター親子」 彩色仕上げ
 地上の動物で最速走者はチーター。猫を彫ることの多い私はネコ科動物に親しみを感じ、遠縁の子に金メダリストがいるような気分。時速100キロの走りで鍛えた筋肉質の体型、それがシャレた水玉模様の毛並みで、なんともカッコいい。
 ところがこの斑点、バーニングで描くのはなかなか面倒……母子2頭でいったい何百個あるのか、思わぬ時間がかかった。並び方も左右対称の法則があるようでありながら、遺伝子のゆらぎのようなランダムな流れもあり、そこを自然に見せるのが難しい。また親チーターの恐ろしげな表情と子チーターの可愛げな表情の対比が面白さと思い、とくに目は3度描き直す。毛並み全体の濃淡と、子の背中の独特なタテガミ(擬態〜保護色?)もアクリル絵の具で薄塗りした。2019/12/21
    



「ワシミミズク」 彩色仕上げ
 鳥類図鑑を見ていて、「ワシミミズク」の精悍な面構えに惹かれた。さらに知床半島や道北にも生息していると記載されていたので、彫ってみたくなった。フクロウは“ドラえもん”のように頭が丸くてのっぺりしているが、ミミズクには羽角という耳のようにみえる羽根があり、そこに向って目の上を斜めの線が切れ上がるので、いかにも猛禽らしいニラミを利かせることができる。最初、バーニングで仕上げてみたが、表現したいイメージに達していない気がして、その上に羽根の模様をアクリル絵の具で手描きした。といっても複雑過ぎてよく判らない面があり、収集した写真からイイトコ取りした結果、世界に一羽しかいない柄になったかもしれない。2019/10/20




児島さんに木彫「サブロー」を贈る
 児島さんに木彫「柴犬・サブロー」を見てもらう。私には気づかない、飼い主だけが知る差異は何か? 指摘されたのはやはり目だった。夫妻の言うとおり中心部を1ミリほど大きくし、目縁の微妙な曲線を修正すると、「サブローにそっくりになった、今にも動きだしそうだ」と喜んで納めてくれた。
 児島式ペーパーディスクサンダー(洗濯機のモーターを利用した研磨機=写真右上)をいただいた御礼として彫ったのだったが、愛犬への思いが強いせいかすっかり感激され、このところ研磨工作が専らでもう使わないからと、電動彫刻機(RYOBI ウッディアート=同右下)をプレゼントされた。返礼のつもりが逆に返礼されてしまった。2019/2/12




「柴犬・サブロー」 彩色了、似ているかな?
 木工機械の改良研究者・児島敬三さんの愛犬・サブローくんがやっと完成。いままで猫ばかり彫ってきた私には、柴犬はみな同じに見えたのだが、直接写真を撮り、ネットの画像を比較しているうちに、個体の違いが多少は判ってきた。また猫のしなやかさに比べて犬は筋骨隆々とした逞しさが特徴と感じられ、彫り跡のゴツゴツ感を活かすことにした。飼い主を見上げて尾を振っているポーズ。舌を少し長めにし、尾の先を持ち上げて元気さも出す。彩色を終え、どうやら完成。果たして似ているかどうか?2019/2/5




「魚を狙うカワセミ」 完成−“翡翠”と呼べるか
 水中の魚をねらうカワセミ。嘴の先から尾まで15pほどなので、余った端材で彫った。形は単純だから彫り〜バーニングともにスムーズに進んだ。問題は塗り。青とも緑とも見える鮮やかな羽根の色から“翡翠”と書いてカワセミと読ませる、玉のヒスイと同じ字だ。そこまで彩色できるか、薄塗りを何度も何度も重ねてみたが思うイメージにほど遠い、色の道(なんか誤解されそうな言葉?)はなかなか奥が深い。ここらで完成ということにしておく。台座の岩場は割った木の断面を活用、上面に胴体をダボでつなぎ、青いプラスチックの下敷きを切って水面に見立てた。カービング教室の第2作。2018/4/12




「イヌワシ」 カービング教室の第1作
 カービング教室の第1作「イヌワシ」が完成した。
 この教室では、講師のすでに完成した模範作品を真似て、そっくりそのままに作成する受講生がほとんどだ。そこで手始めの習作は、見学に行ったとき最初に見せてもらったイヌワシ(胸を張って立つ縦長の姿勢)を望んだのだが、私に与えられたのは横長のポーズだった。羽根の細部や彩色も野鳥図鑑を示され、それを参考にするよう指示された。サンプルがないので、毎回講師の指導を仰ぐことになった。習う以上、独断で進めるわけにはいかないけれど、すべてを木で作りたい私は、足(バードカービングでは針金で作る)は、わがままを言って、台座に彫り込んでつなぐ方法をとらしてもらった。
 精密さにおいてまだまだ未熟だが、まずはバードカービングの手順を知り、とくに彩色は、気長に何度も塗り重ねる手法を“体得”できたと思う。2017/11/15





「トイプードル」 巻き毛のモジャモジャ感
 長女宅で犬を飼った。子供たち(私には孫)の多数決でトイプードルを選んだ由。チョコレート色なのでチョコと末の子が名付けた。家を訪ねると、初対面の私の膝にもすぐ跳び乗ってきた。まだ幼犬のせいか元気いっぱい跳ね回っていて、明るい家庭のムードメーカーになっているようだ。で、この小犬を彫ることに。
 愛らしさを表わすため頭をかしげたポーズに彫ったのだが、彩色したら目と鼻が体毛の焦茶の中に沈んでしまって、表情が生きてこないことに気づいた。木片を削ってピンクの舌を出させ、どうやら可憐さを保つ。今回、巻き毛のモジャモジャ感を出すのが難しかった。2017/4/23

トイプードル正面 トイプードル側面



「ハクチョウ」 曲線を活かしたポーズ
 以前住んでいた士別の風物詩……毎年春先、多寄31線西の天塩川旧河川に、シベリアからハクチョウの群れが飛来し、長旅の羽根を休める。いつもは静かな湖沼が2000羽を越える渡り鳥と、それを見に来る人たちで大賑わいとなる。
 何度か見に行ったときの情景を思い出し、女性的ともいえそうな優美な姿を表現すべく、曲線を活かしたポーズに彫りあげた。彼らはさらに本州の猪苗代湖や瓢湖に行き、秋口にはまた士別に戻って一休みしたあと故国へ帰るという。いつも思うのは、あれほど多数の群れが一斉に飛び立つとき、いったい誰がどうやって決断し、どうやって全員に周知するのか、不思議でならない。2015/4/1

ハクチョウ右側 ハクチョウ前面 ハクチョウ左側



「チーター親子」 ベニア板の中のサバンナ
 ネコ科の野生動物で最も魅せられるのはチーターだ。走り〜狩るのに必要な機能のみ極限まで鍛えた体形はスマートで美しい。顔つきも獰猛というより精悍な感じ、体毛の水玉模様もしゃれている。それに子どものなんと愛くるしいこと。
 等身大に彫ってみたいが、大きな木を入手できないし作業場もない。で、夢はすっかり矮小になり、ベニア板にチーター親子を焼き付け。絵もバーニング技術も下手すぎて、サバンナの草原にはほど遠かった。2枚目は表情と毛並みに意を注いだ。2015/2/5-20

チーター親子1 チーター親子2



「豆助」 初めての犬
 いつも猫ばかり彫っているが、展覧会場で「犬は彫らないのですか」と問われ、「豆助なら彫ってみたい」と答えてしまった。それまで思ってもみなかったのに、不意の問いかけにTV“和風総本家”のマスコット犬が浮かんだ。
 柴犬の子は、身に何もつけなていなくても可愛いが、首に唐草模様の風呂敷包みを巻いたとたん可愛さが倍増する……これは一体なぜなんだろう? 口を開け舌を出したら、嬉しがっている表情になったように思う。初めて彫る犬、どうやら完成。2014/10/8

豆助-正面 豆助-側面



「巣鶏」模刻 ザックリ彫りを学ぶ
 A型人間の私はいつも細部にこだわって、仕上げはついチマチマ彫ってしまう。今回はほとんど粗彫りのような佐藤朝山の「巣鶏」を模刻、その大胆なザックリ彫りを学ぶことにした。もちろん展覧会には出せない、自分の勉強のため。
 手本と寸分違えず彫るのでなく、細部はいい加減でいいから、全体の形を念頭におき、大雑把に彫るよう心がけた。入手した写真は側面だけなので、前後がどうなっているかわからない。そこは成り行きで適当にアレンジした。彫ってみて気づかされたのは、ピラミッド形の安定した構図、簡潔な両翼と尾羽根の処理、ともに私には考え及ばないシンプルかつ洗練された造形だった。2013/10/14

巣鶏模刻-前 巣鶏模刻-左



「森の王者」 硬いサクラ材と格闘
 初めて彫るサクラ材に、木彫サークルの先輩が「この木を彫るにはマウスピースがいるぞ」といった。なるほど材質が緊密で重く、硬い。腕にも歯にも力が入る。けっきょく歯を傷めはしなかったが、叩き鑿1本の刃先を変形させ、彫刻刀2本を欠かしてしまった。散々手こずらせてできた梟なので、敵ながらアッパレと最大級の題をつけた。
 面倒な肩羽根〜雨覆は石目彫りを応用し、上側に被さる羽根を列に沿って順次重ね彫り、風切〜尾羽根はバードカーヴィングの要領で段差式に彫った。木に粘りがあり、そのせいか削り跡に光沢が出る。終わってみれば、好きな材質といえそうだ。2012/7/18

見返り梟-正面 見返り梟-側面



「舞い降りる梟」 細工は我流…
 梟の顔はパラボラアンテナのように窪んでいて集音器の役目を果たし、また羽毛が柔らかいうえ風切羽根の周囲に生える綿毛の消音効果で、音もなく獲物に襲いかかることができるらしい。体の構造からして正確無比な「森の忍者〜プレデター」なのだ。しかし、その“音無しの翼”を広げて獲物に襲いかかる姿は優美かつ孤高にすら見え、つい「森の賢者」と言い換えたくなる。いままで梟を何度か彫ったが、うまくいった試しがない。細工は流々ならぬ我流、仕上げをご覧じろ、とは言い難いが。2011/10/15

舞い降りる梟-正面 舞い降りる梟-背面



「欲張りすぎ」 エゾシマリスの頬袋
 北海道に棲むリスは、エゾリスとエゾシマリスの2種類らしい。エゾリスの朴訥な表情もいいが、エゾシマリスのほうには頬袋があって、木の実を入れると顔が2倍にもなる(小さいドングリなら左右3個ずつ、大きいドングリなら2個ずつ入るそうな)。ユーモラスな表現をしたい私には後者が恰好のモデルだ。動物は己の容量を知っているだろうが、生き物には欲というものがある。限界を越えそうな頬張り方をすることだってあるのでないか……と思いながら彫ったり削ったりしていたら、こんなのができた。第2回北の動物大賞展の入選作。2010/10/8


リス正面 リス背面



「ペンギン親子」 1週間の速成
 ペンギンは単純な形なので彫るのも早く、彩色を含めて1週間で完成。しかし、実際に彼らが生命の誕生に到るにはそんな簡単なものではないらしい。皇帝ペンギンの映画を観たことがあるが、−40℃という酷寒の南極大陸で、ときには激しいブリザードに吹き曝されながら120日間も絶食して卵を抱き続ける。愛らしい姿態からは想像できない壮絶な生き方だった。そんな彼らに一時思いを馳せてみた。2010/3/8

ペンギン親子-正面向き ペンギン親子-横向き



「小さな睥睨へいげい」 コノハズクの眼力
 猛禽類の猛々しさと驚いたような眼の愛らしさを共存させるには、ドラエモンのような丸顔のフクロウより、耳様の突起があるコノハズクのほうが表現しやすい。切れ上がる斜めの線によって“睨み”を効かせられるからだ。ところが羽根の模様は複雑きわまりない。写真集を参考にバーニング、といってもやはり複雑すぎてよくわからないので、少々図案化してごまかす。仕上げにフラットクリアーという艶消しラッカーを塗ったのだが、これがけっこう光って、ギトギトした品のないものに堕してしまった。艶消しといっても艶は出る、なんか“痩せる飴”みたいな、だまされたような感じ。2009/11/3

コノハズク



「カワセミ」 彩色ままならず
 手本は10数年前のNHK放送のビデオ。バードカーヴィングでは足を針金で細工するのだが、私はすべて木でつくりたい。止まる岩のほうに足を彫りつけ、カワセミと岩をダボでつないだ。ジェルトンは彫りやすく、形は比較的容易にできたものの、彩色が思いどおりにならない。青とも緑とも見える微妙な美しさが出せないのだ。失敗するたびに下地剤で塗りつぶしてやり直し。5回ほど塗り替えて、やっとこの色。とても“渓流の宝石”と呼べる色合いにはならなかった。「翡翠(かわせみ)は一張羅(いっちょうら)着て魚捕り」なんて句のようなものをつくって気分転換。2008/5/3

カワセミ背面 カワセミ前面




<<木彫は楽し